すべてのドゥカティ製エンジンと同様、デスモドロミック・システムは、デスモセディチ・ストラダーレが最高のパフォーマンスを発生するための重要な要素となっています。デスモセディチ・ストラダーレのデスモドロミック・システムは、設計を完全に見直してコンポーネントを小型化することによって非常にコンパクトなヘッドを実現し、これまでにないレベルの洗練性と軽量化を実現しています。
デスモセディチ・ストラダーレは、サーキットにおける優れたパフォーマンスと公道走行に必要なあらゆる条件を兼ね備えています。エンジンの排気量は、MotoGPよりも大きな1,103ccに設定し、公道での走りを楽しむ上で重要な中速域のトルクを最大限に引き出し、低回転域から力強いトルクとパワーを発生します。
新型パニガーレV4に搭載されるデスモセディチ・ストラダーレ・エンジンは、厳格なユーロ5+規制と厳格な騒音規制に適合するため、さらなる進化のステップを踏みました。それにもかかわらず、最高出力はわずかながら0.5ps増加しています。さらに、軽量化されたコンポーネントの使用により、エンジン重量が1kg削減され、慣性の低減という点でもメリットがもたらされれています。
サーキットにおけるサウンドを聞く 🔊
カーボンファイバー製のフェアリングの中には、よりパワフルで軽量なデスモセディチ・ストラダーレRが搭載されています。スーパーレッジェーラV4に搭載される998cc 90°V4エンジンは、1,103cc V4よりも2.8kg軽量です。このエンジンがレース指向であることは、乾式クラッチの採用と、手動調整式のデスモドロミック・タイミングシステムを見れば明らかです。
デスモセディチ・ストラダーレは、V型4気筒レイアウトを採用し、デスモドロミック・バルブ駆動システムを採用しています。ユーロ5+規制に適合したパニガーレV4は、216ps@13,500rpmの最高出力を発生します。これは、以前のバージョンと比較して、0.5ps(14,500rpmにおけるピーク出力では2.5ps)パワーが増加しています。このエンジンはまた、120.9 Nm(12.6kgm)@11,500rpmの最大トルクを発生し、6,000rpmから最大トルクの80%を提供します。
すべてのドゥカティ製エンジンと同様、デスモドロミック・システムは、デスモセディチ・ストラダーレが最高のパフォーマンスを発生するための重要な要素となっています。デスモセディチ・ストラダーレのデスモドロミック・システムは、設計を完全に見直してコンポーネントを小型化することによって非常にコンパクトなヘッドを実現し、これまでにないレベルの洗練性と軽量化を実現しています。
一般的なモーターサイクルの場合、クランクシャフトとホイールの回転方向は同一です。しかし、MotoGPの場合、ホイールと逆方向に回転するカウンター・ローテーティング・クランクシャフトが広く使用されています。ドゥカティのエンジン・スペシャリストは、モータースポーツの世界に適用したのと同じ理由で、このレーシングマシンのテクニカル・ソリューションを採用しました。実際、このソリューションには、物理における2つの側面に関連する利点があります。それらは、ジャイロ効果と慣性です。カウンター・ローテーティング・クランクシャフトは、走行中にホイールによって生じるジャイロ効果の一部を打ち消すことによって、ハンドリングおよびコーナーの切り返しにおける俊敏性が向上しています。
2番目のメリットは、車体および回転するエンジン部品の慣性(すなわち、物体があらゆる状態変化に対抗する挙動)に関係しています。加速中、路面に伝達された駆動トルクは車体を前方に押し出すことによって、ウィリーの傾向が発生します。慣性の法則により、カウンター・ローテーティング・クランクシャフトは反対方向のトルクを発生し、フロントホイールを下げてウィリーの傾向を抑制するため、加速時に有利に働きます。
同様に、制動中または急制動時には、リアホイールがリフトアップする傾向が発生しますが、クランクシャフトも減速するため(エンジン回転数が低下)、リアホイールのリフトアップに対抗する反対方向の慣性トルクが生み出されます。その結果、カウンター・ローテーティング・クランクシャフトは、加速時と制動時の両方で、プラスの効果が得られます。
当然のことながら、このレイアウトを実現するためには、クランクシャフトの回転を進行方向と同じ方向に変換する必要があります。そのため、アイドルホイールと呼ばれる追加の歯車が装着されています。
70°のクランクピン・オフセットと90°のVバンク角により、あたかも2気筒ユニットのような点火シーケンスが生み出されています。ドゥカティでは、この独特な点火順序を「ツインパルス」と呼んでいます。この点火シーケンスの特徴は、左側の2気筒が短い間隔で点火し、同様に、右側の2気筒も短い間隔で点火するという点です。タイミングチャートにおける点火ポイントは、0°、90°、290°、380°となります。そのため、このエンジンは、MotoGPのデスモセディチを彷彿とさせるV4サウンドを奏でます。
フロントバンクのジェネレーター側の第1シリンダーが0°のタイミングで着火すると、その直後の90°のサイクルで、同じ側のリアバンクのシリンダーが着火します。その後、しばらくインターバルが空いて、駆動トルクが発生しない状態が続いてから、クラッチ側の2つのシリンダーが90°のサイクルで着火します。
「ツインパルス」の点火順序による重要な利点は、ドゥカティスタを魅了する独特なエグゾースト・サウンドだけでなく、ドゥカティMotoGPライダーに最高と評価されたパワー特性を実現していることです。この特性は、とくにコーナリング時およびコーナーからの脱出時に、ライダビリティの面で大きなアドバンテージをもたらします。
各スロットル・ボディには、2本のインジェクターが組み込まれており、低負荷域ではスロットル・バタフライに近い方のインジェクターが機能します。その一方で、最大のパフォーマンスが要求される領域では、その上に設置されているもう一つのインジェクターが作動します。各シリンダーバンクのスロットル・ボディは、それぞれ専用の電気モーターで駆動されます。フル・ライド・バイ・ワイヤ・システムにより、可変吸気システムは、複雑な制御ストラテジーを完璧に実行し、選択されたライディング・モードに応じたエンジン“フィール”の変更を可能にしています。
ドゥカティ・コルセとの緊密な共同作業により、軽量かつコンパクトで、ハイパフォーマンスなエンジンが完成しました。デスモセディチ・スタラダーレの単体重量は64.5kgで、1,285ccのL型2気筒スーパークアドロ・エンジンよりもわずか2kg重いだけです。
ライナー内部を摺動する81mm径のピストンには、2本の低摩耗コンプレッション・リングと1本のオイル・リングが装着されています。ピストンは、アルミニウム成形品で、“ボックス・イン・ボックス”テクノロジーが採用されています。このテクノロジーは、ピストンのスカート高とピストン上面の肉厚を薄くすることが可能で、必要な強度と剛性を確保しつつ、磨耗や慣性負荷を低減する役割を果たしています。
圧縮率は非常に高い14:1に設定されています。この値も、レースを起源とするこのエンジンの特徴を表しています。ピストンは、中心間距離が101.8mmの鍛造スチール製コンロッドに連結されています。
高い完成度を誇る6速ギアボックスは、ドゥカティ・クイック・シフトEVO(DQS EVO)を採用することによって、革新的な進化を遂げています。このシステムは、スロットルを開けたままの状態で、シフトチェンジを行うことができます。さらに、DQS EVOでは、シフトアップとシフトダウンの際に、異なる作動ロジックを採用しています。スリッパー・クラッチとエンジン・ブレーキ・コントロール・システムを統合することにより、サーキット走行でも圧倒的なパフォーマンスを発揮します。
プログレッシブな特性を備えた湿式クラッチは、優れたトルク伝達機能と快適な乗り心地を両立させています。サーキット走行など、急激なシフトダウンによる強力なエンジン・ブレーキが発生する状況において、スリッパー・クラッチはリアの挙動を安定させ、コーナー進入時のアグレッシブなブレーキングの際に、優れたコントロール性を提供します。
MotoGPエンジンと同様、デスモセディチ・ストラダーレにもセミ・ドライサンプ・システムが装着されています。これにより、いかなる状況であっても、すべての稼動パーツに対して効率的なオイルの供給と回収が行われます。
チェーンで駆動されるオイルポンプは4つのステージで構成されています。1つはオイルの供給用のローブポンプで、3つは回収用です。回収用の1つのギア付ポンプは、2つのダクトを介してシリンダーヘッドからオイルを引き抜きます。他の2つのローブポンプは、ピストン下のクランクケースを一定の真空状態に保ちながら、あらゆる作動状況で効果的にオイルを回収します。これにより、一般的な潤滑システムで発生する空気抵抗によるパワーの吸収や、コネクティングロッド・ケース内のオイルが波打つことによって引き起こされるパワーロスを抑制します。
フィルターハウジングとしての役割も備えているオイルタンクは、クランクケースの下に取り付けられ、ギアボックスに接続されたマグネシウム製のサンプ内に設置されていますが、クランクケースとは隔離されています。オイルの冷却には、ウォータークーラーの下に固定された専用のラジエーターを使用します。
前後のシリンダーバンク間に設置されたウォーターポンプは、一連のギアで駆動されるシャフトによって作動します。ウォーターポンプは、冷却回路のサイズを可能な限り小さくし、効率を高め、エンジン重量を最適化するように設計されています。
軽量コンポーネントを使用することにより、エンジンの重量は1kg削減されています。
エンジンの軽量化対策には、カムシャフトの軽量化に加え、オイルポンプ、オルタネーター・ローター、ギアドラムなど、パニガーレV4 RおよびスーパーレッジェーラV4から派生した軽量コンポーネントの使用が含まれます。これらに、よりコンパクトなギアバンドを備えたクラッチ、プライマリーおよびアイドラ・ギアが追加されています。
デスモセディチ・ストラダーレは、ドゥカティ・スーパースポーツ・バイクの心臓部です。このエンジンは、パニガーレV4およびストリートファイターV4のすべてのバージョンに搭載されています。