ドゥカティでは、世界中の誰よりも先にモーターサイクルのエアロダイナミクスの研究を始めました。私たちは、世界最高峰のレースであるMotoGPに、革新的な空力コンセプトを導入した最初のメーカーとなりました。
エアロダイナミクスの方法論の開発は、ドゥカティコルセと密接に協力して行われ、マシンの設計に活かされています。これによって、1000分の1秒単位の違いが生み出されます。シーズンごとにプロジェクトは変化し、進化しますが、いくつかのマイルストーンは維持されます。
「デスモセディチGP16の空力デザインは、間違いなく、もっともパワフルで効果的なものでした。その後のレギュレーションの変更により、同様の方法で開発を継続することはできませんでした。現在では、すべての空力パーツは、以前のものよりも全体的に効率が低い、閉じたC形状をしています。
私たちは、2017年に中断された開発を継続する方法を模索していました。そして、スーパーレッジェーラV4という最高の空力プロジェクトに新しい命を吹き込みました」
私たちは、2017年に中断された開発を継続する方法を模索していました。そして、スーパーレッジェーラV4という最高の空力プロジェクトに新しい命を吹き込みました」
ドゥカティは、レースの世界で常に最高のパフォーマンスを発揮するエンジンを搭載してきました。しかし、最高のエンジンを搭載していても、そのパワーを確実に路面に伝えなければ意味がありません。ここで、エアロダイナミクスが重要な役割を果たします。
「スーパーレッジェーラV4に装着される、デスモセディチGP16から派生したウイングは、驚異的な垂直荷重、つまりダウンフォースを発生させます。パニガーレV4を基準にすると、ウイングを備えた2020年モデルのV4のダウンフォースは30%増加し、スーパーレッジェーラV4では50%も増加しています。これらは非常に重要な数字であり、ライディングへの影響は一目瞭然です」
真のイノベーションは複雑化することではなく、簡素化することです。スーパーレッジェーラV4に装着されたエアロパッケージにより、乗り易さが向上しています。これによって、出力を低下させることになる電子制御システムの介入頻度を低下させ、パワーをフルに活用できるようになります。フロントの垂直荷重が増加することにより、加速時の挙動が改善されます。グリップが高まるために、より早い段階からスロットルを開けることができます。
「最先端のモーターサイクルには、数多くのエレクトロニクスが必要であるとしばしば考えられていますが、実際にはそうではありません。さまざまな動的挙動およびエアロダイナミクスに取り組むことにより、モーターサイクルのエレクトロニクスを開発する必要性が低下します。フロントウィングは、速度が上がるにつれて安定性が高まるように機能します。それによって、アンチ・ウイリー・システムの介入頻度を低下させることができます。さらに、コーナー出口でフル加速するときの安定性も高まるため、エレクトロニクスの介入を減らして、より多くのトルクを活用することができます」
たとえば、ムジェロでのテストでは、ウイングを装着することによって、最終コーナーを立ち上がってフィニッシュラインを通過するまでに、8mもの大差がつくことが分かりました。
常に新しい方法を模索し、革新的で誰も想像できないようなソリューションを発見することは、ドゥカティという企業の遺伝子に組み込まれています。このまったく新しい革新技術は、ドゥカティのアイデンティティを形成する重要な一部となっています。ドゥカティのモーターサイクルは、進化を続けながらも、間違いなくドゥカティであり続けます。
「このプロジェクトにおいて、GP16の空力パッケージをモーターサイクルに取り入れることは、非常に重要でした。それは、驚くべきパフォーマンスを追加するためだけでなく、ドゥカティという企業の姿勢を示すためにも必要でした。市販のモーターサイクルに空力パッケージを採用することにより、MotoGPにおける研究開発の成果を量産バイクに導入するという、企業文化の変化が始まったのです。MotoGPマシンという限られた世界のノウハウを、数多くのドゥカティ・ファンに提供することにより、以前はプロのライダーのみが味わうことができた特別な感覚を、一般のライダーの方々も体験できるようになったのです。それは大きな変化です。まさに、モーターサイクルの文化に革命をもたらす変化といえるでしょう」
スーパーレッジェーラV4は究極のドゥカティ・プロジェクトです。このプロジェクトにおいて、私たちは実現可能性という障壁を一つ一つ克服しながら、軽量設計による極めてエモーショナルな走りの世界を創出しています。
夢のバイクを設計、製造したドゥカティ・エンジニアへのインタビューをご覧ください!